リクエスト企画で「着物のルイン」を頂きまして、そしたらものすごいネタを送られてそれが可愛すぎた。着物ルインは元旦に描いた。↓
新しい年。
日をまたいだだけとはいえ、特別な意味を持ってくるこの特別な時期。
セントシュタインも盛大に祭が行われ、連日歌や踊り、催し物でにぎわい人々は祝いの言葉で喝采しながら飲み明かす。
リッカの宿屋もそうだ。毎年趣向を凝らした演出で、宿泊客や飲み客を楽しませている。
今年はロクサーヌの店から変わった衣装や装飾品を仕入れられたので、異国風に正月を祝うことになった。
常から年若く麗しい女性達の多いカウンターが、さらなる煌びやかさでお祭りムードに拍車をかけた。
「リッカ、すごくよく似合うよ」
「ルインも!その衣装着るのが大変だったでしょう?でもとってもよく似合っているわ」
東洋の民族衣装だという色鮮やかな「キモノ」を着付けてもらい、リッカとルインは笑いあった。
(そうだ)
ルインは思い立って、リッカに断りをいれると着物姿のまま二階に上がる。
(レイヴァンに見せてこよう)
美しいものが好きなレイヴァンだもの。綺麗な着物を見せてあげたい。
彼は今宿の従業員用の一室で寝泊まりしている。ルインもよく利用するので迷わずに部屋まで辿り着いた。
まず、新年のご挨拶。
このめでたく晴れやかな朝から君の顔を見られるなんてボクは一年の幸運を手にしたも同然だねとか何とかいつも通り。
レイヴァンは大袈裟ともいえるほど感動を示して、ルインの着物も着物姿も誉めてくれた。
嬉しそうにしてくれるレイヴァンに、ルインも嬉しくなって、ご機嫌の笑顔で着物の振り袖を、つまりは両腕をレイヴァンに差し出した。
「?どうしたんだい、ルイン君」
「帯、解いてレイヴァン」
さっきまで初日の出も顔負けに表情を輝かせていたレイヴァンは、卒倒しそうになった。
ルイン君ルイン君。もし仮にも万が一にでもそういう意図があってもなくても、ボク以外の男にそんな要求をしてはいけないよ!
レイヴァンのくせに正論の説得が脳裏を過ぎる。
ルインは構わずに、えいっ、といって自分で組紐を解いていく。
「ル、ルイン君。着物が苦しいのかい。可哀想だとは思うけど少し我慢して、宿の女性陣に頼んだ方が」
「この帯、解いて伸ばしても綺麗なんだ…ん、く、んん…」
さすがに背中に手が回らず、帯結びを解くのに苦戦している。
せっかく綺麗に着付けているのに、と思うが、解いたあとの帯も見せてくれようとする気持ちは正直嬉しいものだった。
(いつだって構わないのだけどね)
べつに、今日の仕事を終えたあとで、また来てくれたら。
もう一度会えることになるし。
「ルイン君。ほら、じっとしていてごらん」
小さく息をついて、うしろに回って帯を解いてやる。ルインは黙って、無防備に背中を晒してくれる。
(隙だらけだなあ…)
誰に対してもする態度ではないと、レイヴァンは知っているから笑顔を浮かべる。
「ルイン君、ほら、解けたよ」
帯を解いて、脇の下から抜くと、肩越しに振り返ったルインはきょとん、とレイヴァンを見上げてきた。
「お代官様は?」
「え」
「帯くるくるーって。解くときはボクが回るんだと思ってたよ」
「ルイン君…」
「やってみようレイヴァン。興味がある」
「え」
キラキラと期待を込めた眼差しでお願いされる。こんな事は滅多にあることではない。
今までルインとは色々一緒に遊んできたが。これは、これは。いささかおもむきが違いすぎるような。
ルインはレイヴァンから帯を受け取ると、自ら自分に巻き直す。さすがにきっちりとではなく、緩くだが。
「あーれーって言ってみる。気分だけでも。もっかい解いて」
「ルイン君、実はそれを楽しみにしていたのかい?」
望まれているのなら叶えよう!これ以上なく帯を華麗に解いてみせるとも!
なんか開き直ったレイヴァンもノリノリになってきた。
帯はそのあと、何度か解かれた。(それ以上の意味も以下の意味もなく)
ただ髪も着物もぐっしゃぐしゃになり、頬を上気させたルインがレイヴァンの部屋から出てきたので、それに関してあること無いこと噂が流れたとか流れなかったとか。
……言葉もありません。
メールで頂いた案はこんなモンじゃなく、はんぱなく可愛かったです…
(2010.1.2)